〜遅れてきたサンタクロース〜 (2/2)





目がさめると、彼のテーブルには2本の缶ビール、
すでに飲み干したようである。

「オーロラ、見たことあるかい?」

オーロラ! さっきの「northern lights」 が通じていたのね!
自分は今回3度目のオーロラの旅であることを話した。
彼はスコットランドでオーロラを見たことがあるそうで、ホワイトホースに来るのは初めて。

彼が初めて会うという息子は4歳になっているという。
そして、たった4日の滞在で、スコットランドに帰らなければならないという。
「仕事があるからね・・・」と。

さらに2本の缶ビールを追加している。
単にお酒が好きなのか、祝い酒なのか、緊張をごまかすためなのか。
私もおつきあいしたいところだったが、到着してすぐにレンタカーを借りることを思い出して断念した。

「日本に住んでいるの? 君の英語、なかなかいいよ」
あはは! これは私も舞い上がるほどうれしかった。
以前の自分なら、英語でこんな会話をすることは絶対に無理だったが、こうして誰かの人生の断片をうかがい知れば旅にも深みが出るというものだ。

飛行機の窓からオーロラを見る夢は今回もかなわないまま、とうとうホワイトホースに着陸した。

荷物をまとめ始めた彼の足元には巨大な荷物が置いてあったことに気付いた。
多分、最初の英語はこの荷物のことを言っていたようだ。

「息子さんへのプレゼント?」
「そうだよ」
「それじゃサンタクロースですね。」
「Just be Santa Claus!」

それは12月29日になったばかりの深夜のできごと。

星野道夫流に言えば、
彼も彼なりの物語を持ってここにやってきた旅人なのであろう。
この極北の町に、さまざまな思いで訪れる人、そしてそれを待つ人。
オーロラは彼らをつつむように夜空を舞うのだろう。
彼の滞在がすばらしいものであったことを願ってやまない。




行き交う人々を見守るようなホワイトホースの踏み切り

                               (2006年末)


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