panta rhei

万物流転

30秒、1分とシャッターを開け、夜空の撮影をする。
完全に静止しているかのように見える星々も、写真を大きく拡大してみると、点ではなく、ごく短い線になっていることがわかります。

さらに、30分、1時間と露光してみると、
星はゆるやかな曲線を描いていることがわかります。

シャッターが開いているあいだ、ずっと星は動き続けているからです。

昨日見た夜空。
きっと今夜も、同じ時間に同じ方角から同じ星座が昇り、沈んでゆくことでしょう。

さらに時間を進めて…一ヶ月後には、夜空の様子は少し違っています。

半年経つと、同じ時間に同じ方角に現れる星座はまったく様変わりしてしまいます。

夏にはさそり座・いて座を見上げながら、冬のオリオン座を想う。

冬にはオリオン座を見上げながら、夏のさそり座、いて座を想う。

こうして、北極星を中心に巡る星々は毎年同じように現れ、消えていくかに見えます。

ところが、夜空は少しずつ変化し、
約1万年後の未来には、北極星はこと座のベガにとって代わられるといいます。

星座の形も少しずつ変わり続け、遠い将来には現在と全く違った配置になっていくそうです。

138億年と言われている宇宙の年齢。
50億年前に太陽系が誕生し、絶え間なく続く変化の中で生命が誕生し、さまざまに姿を変えて現在の私たちがいます。
実は、私達の身体を構成する元素の一部は、太陽系が誕生する以前に存在した恒星の核融合で作られたものなのです。
その星が寿命を迎えて大爆発し、その時に吹き飛んだガスが今の太陽系の原材料となりました。
星のかけらでできている私達の身体。
いつか命を終えて姿がなくなったとしても、私達を形作っている物質は姿を変えて宇宙を構成し続けるはずです。

人間の一生の時間の中では計り知れない宇宙の変化ですが、
カナダ・アラスカ極北の町や、北海道の地方都市に見てきた、かつて大都市として栄えた時代の名残。
海岸に残る第二次大戦時に建造されたトーチカ。
夜空の撮影をしながら、
億年の単位で星々を動かしているのと同じ時間が、今この瞬間にも流れ、
目の前の景色と自分を一瞬一瞬変えているということを知ることができます。

この世界の中には、静止しているものは何一つとしてないということを、
宇宙は写真撮影を通して私に教えてくれているような気がします。

この「パンタ・レイ」万物流転 をテーマとして撮影を続けていきたいと考えています。

横山明日香
2018.1.1