Northen Lights を追って (10/13)
北の空の薄明かりは、弱いながらも徐々に幻覚ではないと確信できる強さになってきた。
「もっと強く」
「もっとこちらへ」
そう思えば思うほど逆に遠ざかってしまうような気持ちになる。
今後の展開は誰にもわからない。
つかみとって引き寄せるわけにはいかない。
叫んで呼び止めることもできない。
この世にはそういうものが多すぎる。
人の心も。
声にならない私の祈りは霧と一緒に上空へと立ち上ってゆく。
やわらかい、やわらかい、光の帯は、少しずつ、少しずつ、こちらへ近づいてくる。
空港へ向かうタイムリミットまであと1時間。
この最後の時になって神様はほほえんだ。
空の光が湖から立ち上る蒸気と混じりあうほどに近づいたころ、シャッターを切り始める。
いろいろな気持ちをおさえて、5秒、10秒、20秒・・・。
フイルムを巻き上げるたびにきしむ音。
時に強く、時に弱く、ひらめいて、さしかかる、
天からふりそそぐ光。
地上から湧き上がる霧。
視野いっぱいに。
音のない世界に、天の声、地の声が重なり合って心に響く。