Northen Lights を追って (7/13)





月が昇る前のせいか、オーロラはひときわくっきりと夜空に絵筆を走らせる。
トナカイの橇はオーロラのアーチを駆け上がる。
時折通る自動車の赤いテールランプとオーロラとの組み合わせは、今しかない貴重なシャッターチャンス。
気温はマイナス40度。
しかし、なんと、信じられないことに、このとき私は暑くてたまらなかった。
息は切れる。
鼓動は高鳴る。
全身が汗だくになってくるのを感じる。
右手にはカメラを握り締め、左手にはカメラの向きを固定するレバー。
自分の息ですぐにファインダーが凍るので、指でこすりとる。
液晶表示は半ば凍りつき、計時精度があやしい。
フイルムの巻き上げ音と共にカメラがきしむ音がする。
必死に撮影しながらも、暑くてたまらない自分を不思議に感じていた。
やがて光は弱くかすかに消えていった。


つづき