光の糸に結ばれて

夜空の写真家たちは、冬場にはときにマイナス20度にもなる寒空の下、
また夏至の頃には夜の時間がたった4時間しかなくても、
寝不足も厭わず、長距離ドライブをしてまで、何の楽しみがあって出かけていくのでしょうでしょうか?

「夜空に光る星たちは、はるか遠くにある太陽(恒星)である」
そんなことは現代人なら小学生でも知っていることですが、
数百光年(光の速さで数百年の距離)~数千光年の遠くから届く、
その光を私の目が、そして手にしたカメラが捉えるということの不思議さや、神秘の虜になっているのではないかと思いました。

当たり前のようですが、もし曇りの晩なら、遠くから旅してきた星の光は雲に遮られ、
私の目には届きません。
もし壁があれば壁に遮られてしまいます。

つまり、星の光が私の目やカメラに写るということは、
はるかな星と自分(カメラ)の間に一切の障壁がないということで、
星と私、星とカメラが、光で一直線に結ばれているということではないでしょうか。

人と人が「赤い糸」で結ばれているという人もいますが、
星の光は、それを見上げる全ての人へとまっすぐ結ぶ「光の糸」なのではないでしょうか。
夜空に輝く無数の星と、地上に立つただ一人の自分が無数の直線で結ばれているイメージが浮かぶでしょうか。

さらにもう少し考えてみました。
実際には、星と自分が光の糸で結ばれているだけでなく、
星の光は地球表面のあらゆるところに降りそそいでいるのではないでしょうか。
星の光に囲まれて過ごす時、私の背後の星からも、目を閉じていても、そのまぶたに光が届いているのではないでしょうか。
この地球上の全ての地表と、私たちの全身が、星の光を浴びているのではないでしょうか。

私たち夜空の写真家は、このようなことを喜びとして、
寒くても眠くても遠くても、撮影に出かけていくのかもしれません。
でもそれは、決して写真家だけの楽しみではなく、
夜空を見上げる全ての人に共通のことではないかと思います。
宇宙開びゃくから138億年。宇宙の中から生まれた私たちが夜空を見上げ星の光を浴びる時、
無意識のうちに母なる宇宙につながっているのかもしれません。

みなさんも、夜空を見上げる機会がありましたら、そんなことを考えてみてくださいね。

横山明日香